✅家族信託とは、自分の財産の管理や運用を信頼できる家族に任せる制度です。
法律的には「民事信託」といい、信託法に基づいて行います。

 

🔁 3つの登場人物

委託者:  財産を預ける人(親など)
受託者: 財産を管理する人(子など)
受益者: 財産から利益を受ける人(親など)

※ 委託者と受益者は同一の場合が多いです。

 

📦 仕組みのイメージ

例えば、認知症などで判断能力が衰えても、親(委託者)の財産を子(受託者)が代わりに管理できるように、あらかじめ契約しておくものです。

🏡 使われるケースの例

  • 親が高齢で、将来認知症が心配、親の代わりに子が管理
  • 親名義の自宅や賃貸不動産を子が管理・売却したい
  • 障がいのある子のために財産を、長期的に管理したい
  • 相続対策として、二次相続を見据えて財産を分ける
  • 共有不動産の整理として、兄弟の共有名義を防ぐ
  • スムーズな事業承継をしたい、自社株式を信託し、次世代に計画的に継承する

 

実際によくある2つのケースを図解的に整理して説明します。

🏡 事例①:認知症対策のための家族信託

  • 登場人物
  • 委託者:父(78歳)
  • 受託者:長男(50歳)
  • 受益者:父(=委託者)
  • 信託する財産
  • 自宅(土地・建物)
  • 預金口座(介護費用などの支払いに備える)
  • 背景・目的
  • 父が認知症になる前に、財産管理を長男に任せ、生活支援をしたい
  • 将来的に自宅を売却して、老人ホーム費用に充てたい
  • 成年後見制度より柔軟に対応したい
  • 信託終了について
  • 信託終了のタイミング:父の死亡日
  • 残余財産の帰属先:長男(遺産として承継)

✅ 成果・メリット

  • 認知症になっても、長男が自宅の売却や運用を可能に
  • 遺産分割協議を経ずに、スムーズな相続が可能
  • 家族間のトラブルを防ぎ、介護も円滑に進む

 

👨‍👩‍👧‍👦 事例②:障がいのある子の生活支援信託

  • 登場人物
  • 委託者:母(70歳)
  • 受託者:長女(40歳)
  • 受益者:長男(障がいがある45歳)
  • 信託する財産
  • 預金3000万円(生活費・医療費の補填)
  • 背景・目的
  • 母が亡くなった後、長男の生活が心配
  • 福祉制度に影響しない形で、生活・療養の支援を継続したい
  • 信託終了について
  • 信託終了のタイミング:長男の死亡日
  • 残余財産の帰属先:長女またはその子など

✅ 成果・メリット

  • 長男に直接財産を相続させずに、生活支援が継続できる
  • 福祉制度の利用制限に配慮しながら、柔軟に支援可能
  • 母の「安心」を可視化するしくみとして有効

✅ 家族信託のメリット

  • 成年後見制度より自由度が高い
  • 財産の使い道や、承継方法を柔軟に決められる
  • 相続発生後の財産承継もスムーズになる
  • 遺言書の代わりとしても活用できる

⚠ 注意点

  • 信託契約書の作成が必要(専門家の関与が望ましい)
  • 不動産がある場合、登記の手続きが必要
  • 税務や相続に関する理解も必要

 

✅ 家族信託と成年後見制度の比較

家族信託 成年後見制度
制度の目的 財産の管理・承継を自由に設計できる制度 判断能力が低下した人を保護・支援する制度
主な対象者 元気なうちに契約を結びたい高齢者や障がい者の親など 判断能力が既に不十分な人(認知症・知的障がい等)
開始のタイミング 本人が元気なうちに契約(予防的) 本人の判断能力が低下してから家庭裁判所に申立て
管理できる範囲 財産(不動産・預金・有価証券など)に限定。医療・介護の意思決定は不可 財産管理だけでなく、医療・介護契約なども対応可能
契約の自由度 契約内容を自由に設計できる(二次相続まで指定可) 法律に基づいた画一的な権限で運用される
関与する機関 家庭裁判所の関与なし 家庭裁判所が選任・監督
費用負担 初期費用:契約書作成・登記(数万~数十万円) 初期費用:申立書類作成・登記(数万~数十万円)

継続費用:月額報酬あり(専門職後見人の場合)

実行者(管理者) 信頼できる家族などを受託者として指定できる 家族か専門職後見人(裁判所が選任、弁護士や司法書士)
終了のタイミング 契約で自由に決められる(受益者の死亡など) 本人の死亡または判断能力の回復(民法で規定)
遺産分割との関係 信託財産は遺産分割の対象外 通常どおり相続財産として遺産分割される

 

📝 補足

実際には、両方を併用するケースもあります(例:信託外の財産を後見制度で管理)。

 

📝 家族信託契約書(例)

信託契約書

委託者:山田 太郎(以下「甲」という)
受託者:山田 一郎(以下「乙」という)

甲および乙は、次のとおり信託契約(以下「本契約」という)を締結する。

第1条(信託の目的)

甲の財産の管理・運用・処分を乙に委ね、将来の生活安定および財産承継を円滑に行うことを目的とする。

第2条(信託財産)

次の財産を信託する。

  1. 不動産
    所在地:大阪府茨木市○○町◯丁目◯番◯号
    土地および建物の全部
  2. 普通預金口座
    銀行名:〇〇銀行 〇〇支店
    口座番号:1234567

第3条(信託の開始時期)

本契約の締結日より信託を開始する。

第4条(受益者)

受益者は甲とする。甲の死亡後は、次のとおりとする。

  1. 甲死亡後の受益者:山田 花子(甲の配偶者)

第5条(信託財産の管理・処分)

乙は、信託財産を適切に管理し、必要に応じて運用・売却・修繕等の処分を行うことができる。

第6条(信託の終了)

以下のいずれかに該当した場合、本信託は終了する。

  1. 最後の受益者が死亡したとき
  2. 委託者および受益者の合意により終了としたとき

第7条(残余財産の帰属先)

信託終了時、残余財産は山田 一郎に帰属させる。

第8条(準拠法)

本契約に関する準拠法は日本法とする。

令和○年○月○日
委託者 山田 太郎 (署名・押印)
受託者 山田 一郎 (署名・押印)

✅ 補足

  • 実務では「公証役場での確定日付取得」や「登記(不動産の場合)」も行います。
  • より複雑な信託では、「信託監督人」「指図権者」「後継受託者」なども登場します。
  • 作成時には司法書士や弁護士など専門家の関与が推奨されます。

 

 

📝 家族信託中に委託者が死亡した場合の流れ

委託者の死亡:  委託者が死亡しても、信託契約が終了しない限り、信託は継続する。
受益者の変更:  多くの場合、受益者を「委託者→配偶者→子ども」などと信託契約書で順番に定めておく
遺産分割の対象:  信託財産は、相続財産とは別扱いとなり、遺産分割の対象にならない。
不動産の名義: すでに「受託者 ○○信託口」名義になっているため、名義変更は不要。
相続税の扱い: 受益者が得た経済的利益に対して、相続税が課税される(信託だから非課税ということはない)。

📘 具体例

  • 委託者:父
  • 受託者:長男
  • 第1受益者:父
  • 第2受益者:母

信託財産:

  • 自宅(土地・建物)
  • 預金口座

流れ:

  1. 父が生前に家族信託契約を結ぶ(財産を長男に託す)
  2. 父が死亡
  3. 受益権は母に移る(契約で取り決め)
  4. 不動産の名義変更は不要(信託継続)
  5. 相続税申告の中で「母が受け取った利益」に対して課税

 

🟡 家族信託と相続の違い

家族信託 通常の相続
財産の管理 受託者が管理・処分可能 相続人全員の同意が必要
死後の財産の行方 信託契約で決定できる(遺言に類似) 遺産分割協議で決定
遺留分 一部、遺留分侵害の問題が出る可能性あり 通常の相続人には遺留分が保障される
柔軟性・自由度 高い(生前から死後まで設計可能) 一律な民法のルールに従う

注意点

  • 受益者が死亡した時点で信託が終了する契約になっている場合は、残余財産の帰属先を契約書に明記しておく必要があります。
  • 遺留分侵害のリスク(他の相続人の取り分を侵害していないか)も検討が必要。
  • 信託の設計によっては、相続税対策として有効にもなり得ますが、課税は避けられません

 

👥 家族信託を依頼する主な専門家と役割

専門家 主な役割
司法書士 ● 不動産の信託登記(所有権移転)手続き
● 信託契約書の作成サポート
弁護士 ● 信託契約書の法的リスクやトラブル防止の確認
● 遺留分や相続人間の争いへの対応

※争いのリスクがある場合は、弁護士に依頼する必要

税理士 ● 相続税・贈与税・所得税などの税務リスクの確認と申告
● 財産評価・税務設計
行政書士 ● 信託契約書の作成支援(法的代理はできない)
● 簡易な信託設計の相談
信託専門家(コンサルタント) ● 家族信託の設計全体のコンサルティング
● 専門家間の連携調整
公証人(必要に応じ) ● 信託契約書の確定日付取得
● 公正証書での作成(特に高額資産や争い防止のため)

 

📝 具体的な依頼の流れ(例)

  1. 司法書士や信託専門家に相談(信託の設計ができる人)
  2. 相続や遺留分などの法的リスクがある場合 → 弁護士に意見を求める
  3. 税務面の影響を把握する → 税理士に財産評価やシミュレーションを依頼
  4. 信託契約書を作成し、必要に応じて公証役場で公正証書化
  5. 司法書士が登記申請を代理

✅ 専門家選びのポイント

家族信託に詳しいか:  実績や事例の有無を確認。対応できない専門家もいます。
ワンストップ対応: 複数士業が連携している事務所は便利です。
説明がわかりやすい: 長期にわたる制度なので、信頼して任せられる相手を。

🔍 相談先を探すには

  • 「家族信託協会」や「民事信託推進センター」などの団体に所属している司法書士・弁護士
  • 「〇〇市 家族信託 司法書士」などで地域検索
  • 信託に強い事務所は、セミナーや無料相談会を開催していることもあります