ちまたには、『相続のご依頼は司法書士〇〇に・・』、『遺言書、遺産分割協議書の作成は行政書士△△にお任せ下さい。』、『◇◇税理士事務所による相続税の簡易算定行います。』、『遺産分割で揉めたら弁護士法人▽▽にご相談下さい。』などと、【〇〇士】がつく職業、いわゆる【士業】と呼ばれる専門家が相続や遺言に関わっています。
しかし、司法書士、行政書士、税理士、弁護士の仕事がどう違うのか?、相続や遺言に関して何をしてくれて、何ができないのか?をご存じの方々はいらっしゃいますでしょうか?
ほとんどの方はわからずに、なんらかの縁があった【士業】に相談していると思います。
相談してから、『これは私の専門外ですので、専門家をご紹介します。』ということがよくあります。
実は、これが一般的なんですね。
私は、これはこれでいいと思います。
【士業】はそれぞれ各種専門【士業】と連携を取っていて、自分の専門外の案件は連携している専門【士業】におつなぎしています。
これは当たり前のことで、【士業】同士が自分が持つ専門知識、経験を融通し合って、法律で認められた独占業務を中心に補い合っているのです。
例えば、結婚披露宴を思い出して下さい。
結婚披露宴には、料理、飾り花、衣装、着付、写真、司会など、結婚披露宴を盛り上げるさまざまな役割があり、その役割にはいくつかの選択肢があります。
料理はホテル、飾り花は花屋さん、衣装はレンタル着物屋さん、着付は美容室、写真はカメラマン、司会は司会業者、と各専門職業の方々が関わって成り立っています。
そして、担当する専門業者によって特徴が違い、選択肢は異なってきます。
もちろん衣装と着付が同じ業者だったりすることもあります。
また、結婚披露宴をするための最初の相談窓口は、ウエディングプランナーだったり、希望のホテルに直接話に行ったり、結婚相談所から紹介してもらったり、と入口は一つではありません。
このように、結婚披露宴をすることが目的ですが、目的までの入口や道筋、選択肢は結婚披露宴をするカップルと結婚披露宴に関わる関係者との関係で内容が変わってきます。
たとえ結婚披露宴をする目的を達成したとしても、結婚披露宴の内容がイマイチでしたら残念ですよね。
この結婚披露宴と同じようなことが相続・遺言でもあるということなんです。
つまり、カップルが相続人や遺言を書く人で、結婚披露宴に関わる関係者が【士業】です。
相続や遺言の目的はさまざまです。想いを伝える、想いを受け継ぐ、財産を承継させる、財産を引き継ぐ、財産を分ける。
しかし、思い通りでなくて内容がイマイチでしたら残念な気持ちになりますよね。
そう、残念な内容にしないためにも、一緒に創り上げていく関係者である【士業】の選択はとても大事になります。
そこで、まず相続・遺言に関わる【士業】の違いについてお伝えしていきます。
【税理士】税金の申告 → 税務署
相続税等税金の申告をしてもらえます。
【社会保険労務士】年金請求 → 年金事務所
遺族年金や未支給年金の請求を代わってすることができます。
【弁護士】訴訟など争いごと → 裁判所
遺産分割訴訟など、遺産分けで揉めたときに他の相続人との敵対交渉をしてもらえます。
【行政書士】役所の書類作成 → 官公署
役所などへ提出する書類作成や遺産分割協議書などの書類作成をしてもらえます。
【司法書士】不動産・会社法人の登記 → 法務局 裁判の書類作成 → 裁判所
土地や家など不動産の名義変更(相続登記)や相続放棄などの書類作成をしてもらえます。
以上のように業務分けがされており、その士業しかできない独占業務もあります。
しかし、戸籍謄本等の代行取得、遺言書や遺産分割協議書などの書類作成は多くの士業ができ、独占業務に付属してお手伝いしてもらえます。
このように、各専門士業の独占業務以外は業務が重なっていることが多く混乱しやすくなるわけなのです。
もちろん独占業務についてはその専門士業のみが業務をすることができます。
ただ、最初の相談となるべき入口は司法書士が良いと思っております。
不動産を所有している方はもちろんそうなのですが、不動産を所有していない方でも司法書士が良いと思います。
その理由は、相続・遺言に関して先程の士業の中で司法書士が中心的な立ち位置にいると思うからです。
司法書士は、法律家と呼ばれる弁護士や行政書士といった他士業の中でも相続・遺言の法律行為については幅広く関わっています。
司法書士は裁判の書類作成ができるので弁護士業務を理解でき弁護士に任せるべきかどうかを判断できますし、遺産分割協議書など法律行為に関する書類に精通していますので行政書士に関わる業務も理解しております。
また、相続・遺言に関連して成年後見や民事信託も司法書士が積極的に活動しており、知識、実績においても他士業に比べて先行していると言えます。
司法書士は、国民の権利を護るために登記を完了させることが主業務となっている職務です。
家などの不動産売買はわかりやすい一例ですが、売主さんと買主さんの間に入って必要書類のやり取りと売買代金の受領に立会って成立させるという重要な職務を果たしています。
問題なく成立させることが目的と考えられますので、相対立する関係者の間に立って調整する業務とも言え、司法書士は柔軟に対応しやすい士業であると思っています。
そういう意味では、各専門家との調整が必要で、柔軟な対応が求められる相続・遺言については最初の相談窓口は司法書士がいいのではないでしょうか。
これまで各士業の違いをお伝えし、最初の相談窓口は司法書士をおすすめさせていただきました。
相続・遺言に関わるご依頼者様自身のほとんどが未経験のうえ、法律関係や人間関係など多くの問題が絡み合っている状況の中で、ご相談をなされることと思います。
ご依頼者様は、暗闇の中で進むべき道がどこかわからないまま進んでいるようなものです。
そんな状況のご依頼者様の進む道を明かりを灯して先導する役割が専門家だと思います。
ご依頼者様の不安を解消して安心して前を向いて進んでもらえるようにお手伝いをしたいと思います。
相続・遺言を専門に業務をしている私の思いとしては、頼るべき専門家を間違うことがないようにしてほしいと願っております。
各士業の違いもそうですが、同業種の専門家の中でも、得意とする専門分野が違います。
さらに、相続・遺言を専門分野とする専門家を選択することをおすすめします。
どうやって選んだらいいのでしょうか?
ホームページを見たり、直接、電話して問い合わせてみる、そして会ってみるのがいいと思います。
相続・遺言は、単に事務的な手続だけで終わるものではないと、私は考えております。
本人や親族などの関係者の心と感情が密接に関わりますので、親族関係や財産の整理だけでなく、心理的な整理も必要だと思います。
『ヒト・モノ・ココロ』、この3つを整理することが大切です。
相続・遺言の業務は、機械的にできるものではありません。
一人ひとり同じではありませんので、親身に聞いて対応する専門家を見つけて下さい。
話したり、会ったりして、直に接して信頼できると思える専門家にご相談しましょう。